「恩返しがしたい」

今日、新規のお宅でサービス担当者会議に参加。「もう、この人わがままだから呆れちゃったわ」と楽しそうに笑いながら奥さんは迎え入れてくれた。それを聞いたご本人は「一日で飽きられちゃった（笑）」と笑う。白髪と同じくらいお顔は白く、頬はこけているが笑顔がとても素敵。

「少し遠いですが、訪問お願いできますか？」と主治医から電話を頂いたのは3日前。「もちろんです！最上の果てまでも行きますよ！！」と答えた。毎年、なぜか雪の多い時期に遠方の訪問依頼が来る。雪国に住んでいるのだからそんなことは仕方ないと割り切っている。

大学病院から地域の中核病院に転院し安定したので自宅に戻ることを決めた。ご本人と奥様と長男さんの3人暮らし。右胸部にポートを埋め込んであるがTPN開始後肝機能が低下したため中止となり維持液に切り替えとなった。毎日の交換は奥様が担当されている。メモを見ながら丁寧にゆっくり交換していると「手際悪いなぁ～」と旦那様。奥様は旦那さんの気分が悪くならないように物凄く気を使っているように感じた。口渇、四肢の乾燥、食事についてなどの聞き取りを済ませリビングに移動し契約を頂く。とにかく、不安なので訪問回数を多くしてほしいと訴えられた。ケアマネさんはその辺りをよく理解しているようで訪問看護と薬剤の訪問をなるべく多く入れると返事していた。お茶を勧めてくれる奥様に思い切って質問してみた。

私：「よく、在宅療養を決心されましたね？」

奥様：「あの人に恩返ししたいんです。」

私：「恩返し？」

奥様：「あの人にはどんなに感謝しても感謝しきれないんです。」そしてこれまでの夫婦の歴史の一部を教えてくれた。人間不信になった自分を守ってくれたこと。母親の介護をしている3年間、4歳と11歳の子供の世話を全部してくれ、自分の食事も作ってくれて介護に専念することが出来たこと。「雪が溶けるまで。が先ずは二人の目標です。」

私：「この雪はなかなか溶けそうにないですね（笑）」

私はこれから奥様の恩返しのお手伝が出来るんだ！！！雪なんか溶けなくてもいいな。と思う。

余談・・・妹さんがラーメン屋さんを経営しているそうで、主治医からの「食べたいものは？」の質問に「ラーメン」と答えたそうだ。ちなみにそのラーメン屋さんはうちの娘の行きつけのお店だった( *´艸｀)