最後の訪問

本日12月1日。5年間訪問したＩさんが施設に入所しました。

「春になったらまた来てね💛」と言って・・・。本人には越冬のための入所だと説明しているから。

5年前。包括支援センターの認知症担当のＮさんから「一緒に訪問してください！！包丁を持って暴れて旦那さんが怪我したんです！！！」と連絡が入り、慌てて訪問したことが昨日のように思い出される。

訪問すると、何事もなかったかのようにいつもの笑顔で「あら、珍しい人が来たわね。コーヒーでも飲んでいきなさい」とコーヒーを入れてくださり、そのあと、お煎餅・かりんとう・お豆・お饅頭・みかん・・・次々とお茶菓子がふるまわれた。話を聞いてみると、

Ｉさん：「娘と旦那が二人で私をボケ老人扱いする。薬だってちゃんと飲んでるのに、こんなもの壁に貼って！」と、服薬カレンダーが貼ってあったと思われる壁を指さし（カレンダーは既に剥がされていた）、段々声が大きくなる。

私：「そうだよね。Ｉさん、薬のめてるよね。いつだってしっかりしてるもんね」

Ｉさん：「薬飲むの、忘れたことなんか無いのに。うちの旦那は浮気ばっかりして家にいないから分からないんだ。」

・・・そこからは若いころの思い出話（浮気された話が中心。真相は不明）が30分くらい続いた。

私：「そうかぁ。Ｉさんの苦労話初めて聞いたよ。いつも元気だから分からなかった。しっかり者のＩさんだと思ってたよ」

Ｉさん：「しっかりなんかしてないよ。薬飲むの忘れることもあるし・・・。時々見に来てみれば？コーヒー淹れてあげるから。」

私：「あらそう？じゃ、様子を見に来てみようかな？血圧とか測りながら。ね？最近血圧は落ち着いてるの？」

Ｉさん：「血圧はどうかな？測ってみてよ」⇒血圧測定⇒私：「やんばいだよ（ちょうどいいよ）。」

Ｉさん：「でも、最近頭が痛いんだ」

私：「昨日から、頭痛の薬出てたね。飲んでみてどうだった？

Ｉさん：「頭痛の薬？あれ？どこ行ったかな？カレンダーと一緒に投げちゃった（捨てた）かな？」⇒庭に探しに行きカレンダーを拾ってくる。（薬も入っている）壁に貼る。

Ｉさん：「こうなってると忘れないで飲めるから便利だね。」

実は、包括のＮさんが買ってきた服薬カレンダーが気に入らずＩさんが外して庭に投げ捨てたらしい。

翌週から訪問を開始した。はじめは訪問の度に忘れて近所にお茶のみに出かけていて探すのに時間がかかり、浮気の話は何度も繰り返し聞かされた。あれから5年。認知症治療のために開始したアリセプトで悪性症候群を疑う症状が発生し中止となり、リバスタッチパッチで状態維持してきた。頭痛は専門医受診し「頭鳴りだよ」の説明に納得し訴えがなくなった。最近では「浮気相手が亡くなった。」と言って急に仲良くなり、訪問時のイチャイチャぶりにはこちらが赤面してしまうほど。

私：「二人で一緒にやりたいことはない？」

Ｉさん：「じーちゃんと手を繋いで旅行したい」

じーちゃん：「北海道がいいかな？」

この願いはケアマネさんを通じて娘さんに伝えられた。

春になったら北海道にふたりで行けるといいね💕